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アクタージュ(第51話)のネタバレ!
カムパネルラにしがみつき膝をついたままジョバンニ——阿良也は動こうとしなかった。
「どうして夜凪まで動かないんだ」
夜凪も阿良也同様に動こうとしなかった。
2人が動かないまま30秒が過ぎていた。
観客には夜凪演じるカムパネルラが動かない理由が分からなかった。
この素晴らしい芝居は、巌裕次郎の喪失という現実が阿良也に影響を与えて生まれたものだ。
巌先生、あなたは何も分かっていないと星アリサは心の中で呟く。
——たとえ芝居が素晴らしくてもこの舞台は失敗——阿良也はもう立ち上がれない。
阿良也に掛けた言葉を思い出す。
次の行動を起こさない阿良也に、何も反応を示さない夜凪。
もうこの舞台を終わらせるには、カムパネルラがジョバンニを振り払って別れを告げるしかない。
それは残酷すぎるよと七生は言う。
「阿良也だって巌さんのことが本当に大好きだから別れられないのに」
顔を上げた阿良也の目には、じっと阿良也を見つめる夜凪の瞳が映った。
罪滅ぼし?とオウム返しする夜凪に、ああそうだと巌裕次郎は答える。
夜凪は稽古期間中に巌と交わした会話を思い出す。
「昔一人の女優の役者人生絶ってしまった。俺は芝居で役者を救える演出家になろうと思った」
そのために劇団天球を立ち上げたと巌は語る。
「ただ一人でも星のように輝けるような役者を育てたい。そのために役者という人生が必要な奴らを集めた」
昔の仲間からは裏切り者だと罵られた。
作品は日和ったと、築いたものを捨てたとも世間から言われた。
ある女性にはくだらないエゴイズムだと言われ、その通りかもしれないと思った日もあった。
「でもみんなちゃんとキラキラしてるわ。巌さんのおかげで」
夜凪の励ましに、俺が死んだ後に分かることだと巌はぶっきら棒に答える。
「芝居って何だと思う」
巌は夜凪に問いかける。
「お前はもう気付いているよな。お前も芝居に救われた口だろうから」
夜凪は思い出す。
寂しくなったとき、悲しくなったとき、家にあるDVDを見て励ましていた。
笑い方を忘れたとき、演技から学んだ。
初めてCMの仕事をしたときに、演じるために死んだ母との思い出を浮かべていた。
「誰かと出会わないと演じられなくて、でもいなくなった人との思い出もお芝居に出来る」
夜凪の回答にそうと巌は続ける。
「そう。俺たちは例え死んでも一人にはなれないんだ。その幸福に気づくことを芝居という」
ただどんなに大切でも声を掛けたくても死者は口を開けない。
生きている奴らで気づくしかない。
だから俺たちは信じるだけでいい。
役者を信じることだけが演出家の仕事だから。
舞台上の様子を映すモニターを演者は見つめていた。
「巌さんに気に入られて、すげぇ勢いで化けやがって…巌さんはすげぇ嬉しそうで」
亀は心の中に仕舞っていた本音を吐き出す。
「俺は…俺たちは悔しかったよ。でも…お前を尊敬していたよ」
だから立ってくれと呼びかける。
「立て!! 阿良也! がんばれ!!」
演者の全員が舞台にいる阿良也へ声援を送る。
立てるよ、阿良也。
病室にいるはずの巌裕次郎は手を差し出す。
阿良也に役者になると宣言したあの日の情景が甦る。
——ああそうか。また待っていてくれたのか。
夜凪が動かない理由を阿良也は悟る。
そして、阿良也は立ち上がる。
いつもの立ち方で。
「ああ良かった。僕は行くよ」
立ち上がったジョバンニに、カムパネルラは微笑みかける。
——すまないアリサ。
とうとう何の償いも叶わなかったというのに、俺はこんなにも幸せに満たされている。
——せめて最後に残してゆくよ。
いつかお前が俺の作品たちに救われる日が来るように。
ベッドサイドモニターの心拍数が0を表示して波形がフラットになり、ピーと音を鳴らす。
アクタージュ(第51話)の感想!
天使と呼ばれる千代子は自らの魅力を最大限に利用することでアドリブに対応します。
一方夜凪は、何かを、誰かとの思い出を投影することで乗り切っていました。
しかし、嫌だと言って膝をついた阿良也には何もしませんでした。
ただ待つという演技で、阿良也のアドリブに応えました。
巌と夜凪、そして阿良也との信頼があるからこそできた演技なのだと思います。
これはまる夜凪を介しての巌と阿良也の最後の会話だったのかもしれません。
「役者という人生が必要な奴らを集めた」
誰もが疑問に感じた星アキラの加入もこの信念があったからだと思います。
いよいよ舞台初日の幕を閉じます。
そして、巌裕次郎は行方は。
次回も見逃せません!!